― FXの分類モデルで失敗しないための評価指標と考え方 ―
AI のモデル作りでは
「どれくらい難しい問題を学習させるか」
がとても重要です。
かんたんすぎる問題を学習すると成長しないし、
むずかしすぎる問題だと学習が進みません。
この「ちょうどよい難しさ」のことを、機械学習の世界では
Proper Difficulty(適度な難しさ)
と呼びます。
この記事では、
- Proper Difficulty の考え方
- FXの分類で使うべき “正しい評価指標”
を分かりやすく解説します。
1. Proper Difficulty(適度な難しさ)とは?
● かんたんすぎる問題 → 成長しない
AI が「そのまま覚えるだけ」で答えられる問題は、
状況が少し変わると全く当てられなくなります。
これは “暗記型モデル” になってしまう典型パターン。
例:
トレンドの時だけ学習 → レンジ相場に弱すぎる

● むずかしすぎる問題 → 学習が進まない
逆に、完全にランダムに近い問題を与えると、
AI は何を学べばいいのか分からなくなります。
例:
FXの「1本先の上げ下げ」
= ほぼランダムに近く、難しすぎる分類問題

どのくらいが最も学習しやすい?
機械学習の研究では、
正しく成長するのは “中くらいの難しさ” のデータ と言われています。
具体的には、分類なら
正解率 が 50~85% くらい
の問題が最も学習に向いています。
FXデータは「むずかしすぎる問題」になりやすい
FXの1分足・5分足などの生データには
小さな上下動(ノイズ)が大量にあります。
そのため、
- 1本先の上げ下げ
- 小さな変化まで分類する
- 閾値を使わずにすべて分類
のような設計をすると、
ほぼランダムに近い問題 をAIに与えてしまいます。
これでは Proper Difficulty を満たせません。
3. 適度な難易度を作る方法(ターゲット設計)
Proper Difficulty を作るには、
ターゲット(正解ラベル)の作り方がとても重要です。
● ① 未来を少し遠くする
1本先 → 難しすぎ
5~30本先 → 適度な難しさになりやすい
● ② 閾値(しきい値)をつける
変化が小さい部分は“ノイズ”なので分類させない。
例:
- +0.05%以上 → BUY
- -0.05%以上 → SELL
- その他 → HOLD(中立)
こうすると 明確な動きだけを学習 できて難易度がちょうどよくなる。
● ③ 特徴量を増やして情報を渡す
価格だけ → ヒントが少なく難しすぎる
テクニカル・ボラ・時間情報 → 学習しやすい
Proper Difficulty は
「データと特徴量のバランス」で作ることができます。
4. 正しい評価指標を使うことが必須
FXの分類では Accuracy(正解率) は使ってはいけません。
理由は簡単で、
FXのデータは クラスの偏りが大きい からです。
例:
HOLD 80%
BUY 10%
SELL 10%
AI が「全部 HOLD」と言っても Accuracy 80%
→ 全然賢くないのに高評価になる

①②③の3択問題で全部①と回答してもいくらか点数獲れちゃうやつね(‘Д’)
✔ 代わりに使うべきは F1(F1スコア)
● F1 スコアとは?
「Precision(精度)」と「Recall(再現率)」のバランスを取った指標。
小さな動きをどれだけ正しく判断できたかを
公平にチェックできる指標です。
✔ FXでは F1 Macro が最もおすすめ
- クラスバランスの偏りに影響されにくい
- BUY / SELL / HOLD を公平に評価できる
- 実力を素直に反映する
という理由から、
FX分類では F1 Macro が “定番指標” になっています。


バイナリー分類はF1でもOK
多クラス分類はF1Macroが必須!
5. Proper Difficulty と F1 の関係
簡単な問題 → F1 が高くなりすぎて過学習
難しすぎる問題 → F1 が低すぎて学習不可能
つまり F1 を使えば、
今の分類問題が「ちょうどいい難しさ」かどうか判断できる。
目安
まとめ
- Proper Difficulty=AI が成長しやすい“適度な難しさ”
- FXの生データは難しすぎる問題になりやすい
- 閾値・未来本数・特徴量増加で難易度を調整できる
- Accuracy は使わない
- F1 / F1 Macro が FX分類の必須指標
- F1 の値で Proper Difficulty を判定できる

難しい問題を解決するために特徴量を工夫するのが肝(‘ω’)
おわりに
FXの分類モデルは、
「難易度をどう設計するか」で9割決まります。
Proper Difficulty を意識してターゲットを作り、
F1 Macro でモデルの実力を正しく測ることで、
AI は大きく成長し、未来データにも強くなります。
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