― 非定常な相場で「優位性確認」が不可能な理由 ―
はじめに
FXのAIや最適化を行っていると、
「ウォークフォワードテスト(WFT)は必須」
という話をよく目にします。
しかし実際にやってみると、
- 期間の分け方で結果が変わる
- 良かった区間が次では全くダメ
- 最適化し直すたびに別の答えが出る
こうした経験をした人も多いのではないでしょうか。
この記事では、
「なぜ非定常なFXにおいて、WFTで優位性を確認することが原理的に不可能なのか」
を整理して説明します。

誰よりもWFTをやってきた僕の知見ですよ(‘ω’)
ウォークフォワードテストとは何か
ウォークフォワードテスト(WFT)は、次のような流れで行われます。
- 過去の一定期間で学習・最適化
- その直後の期間でテスト
- 期間をずらしてこれを繰り返す
目的は
「過去で良かった戦略が、未来でも通用するか」
を確認することです。
一見すると、とても合理的に見えます。

FX相場は「非定常」である
ここで重要な前提があります。
非定常とは何か
非定常とは、
- データの性質が時間によって変わる
- 同じルールがずっと通用しない
という状態です。
FXでは、
- ボラティリティが変わる
- トレンドとレンジが入れ替わる
- 市場参加者の行動が変わる
これらが常に起きています。
つまりFXは、
「昨日と今日でルールが違う世界」
なのです。

WFTが暗黙に仮定していること
ウォークフォワードテストは、実は次の仮定を置いています。
直近の過去と、少し先の未来は
ある程度似た性質を持っている
この仮定が成立するなら、
過去で最適だったパラメータは
未来でもそこそこ使えるはずです。
しかし――
非定常なFXでは、この仮定が成立しない
FXでは、
- 過去A期間:低ボラ・レンジ
- 次のB期間:高ボラ・トレンド
のように、相場の性格が完全に変わることが珍しくありません。
このとき、
- Aで最適だったパラメータ
- Bで最適なパラメータ
は、別物になります。
つまり、
WFTで確認しているのは
「過去の世界での正解」であって
「未来の世界での正解」ではない
という状態になります。
分割によって結果が変わる理由
WFTの結果が、分割方法によって変わるのは当然です。
なぜなら、
- 分割 = 相場レジームの切り取り
- 切り取る位置が違えば、相場の性格も違う
からです。
これは「手法が不安定」なのではなく、
相場そのものが不安定(非定常)
だから起きています。
非定常なものに「優位性」を求める矛盾
ここが本質です。
優位性とは
- 同じ条件なら
- 同じ結果が期待できる
という性質です。
しかしFXは、
- 条件が時間で変わる
- 正解が固定されていない
世界です。
この状態で、
「過去で勝てたから、未来でも勝てるか」
をWFTで証明しようとすること自体が、
論理的に矛盾しています。
結論:WFTで未来の優位性は証明できない
はっきり言うと、
非定常なFX相場において
ウォークフォワードテストで
未来の優位性を確認することは不可能
です。
これは技術不足ではなく、
問題設定そのものの限界です。
それでもWFTが使われる理由
では、WFTは全く無意味なのでしょうか?
答えは NO です。
WFTの本当の役割
- 未来を当てるため → ❌
- 危険な戦略を排除するため → ✅
具体的には、
- 期間が変わると即崩壊する
- 一部の区間だけ異常に良い
- 過剰最適化された戦略
こうした 地雷戦略を見つけて捨てる ためには有効です。
AIトレードではどう考えるべきか
AIを使う場合、
- 相場は変わる前提
- モデルは再学習する前提
で設計すべきです。
そのため、
- WFTで最適パラメータを探す
よりも - WFTで壊れるパラメーターを探す
方が、実践的です。
まとめ
最後に結論をまとめます。
- FXは本質的に非定常
- 非定常な世界では未来の正解は固定できない
- WFTで未来の優位性を証明することは不可能
- WFTは「保証」ではなく「ふるい落とし」に使うべき
ウォークフォワードテストは万能ではない。
しかし、正しく使えば意味はある。
この視点を持つことが、
FX×AIを本気でやる人のスタートラインだと思います。
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